君は、(HD以上の画質で動画再)生きのこることが出来るか  ~Widevineについて~

君は、(HD以上の画質で動画再)生きのこることが出来るか  ~Widevineについて~

概要

Android端末において、Widevine L1対応端末でも何らかの理由でL1とは取り扱われずNetflixやAmazon PrimeでHD以上では再生できない現象が発生している。これはランダムに発生し現時点ではどうにもならない。お読みいただいているあなたのAndroid端末も、もしかしたら既にHD以上の画質で動画サービスを楽しめないかもしれない。本稿では備忘も兼ねて現状をまとめた。

ことの起こり

ある晴れた昼下がり、筆者は怠惰の極みを迎えていた。3歩歩けば完全セットアップされたデスクトップPCがある。しかしベッドで寝転がっている自分を移動させずにスマートフォンで動画を再生する、これは文化の極みではないか? 或いは、堕落…そう、これもまた文明の果てよの… 等と自堕落を極めようとしたまさにその時であった。何度再生してもNETFLIXの画質が劣悪である。まるでSD解像度で配信される動画のようだ… いや、SD画質じゃねーかこれ。筆者はNETFLIXのプレミアムプランに加入している。4K再生環境が無いのに4K HDR再生に対応したプランを契約しているのだ。だがしかしSD画質で再生されている。どういうんだこれ…なにが起きているんです?

状況の整理

まず、現象を確認したのはドコモから発売されているarrows 5G F-51A。この端末はWidevine(後述)のL1に対応している。NETFLIXについてはAndroid版はブラウザ再生ができないのでアプリ(2021/05/01時点で最新)での再生となる。NETFLIXのアプリ上でHDコンテンツ(最近のガンダム等、周波数が高く細い線やグラデーションの多いアニメがわかりやすい)を再生すると、必ずSD画質で再生される。SD画質の場合は輪郭の再現の不自然さやトーンジャンプが発生する(※これはNETFLIXのSD画質が低ビットレートなだけでSD画質の本質ではないが割愛する)のですぐにわかる。また、このときアプリの自アイコン→アプリ設定→再生仕様と辿ると以下の画面ショットのように最大再生解像度が"SD画質"と判断されている。詰みましたわ!










尚、Windows PC及びiPad mini4/iPhone SE2では問題なくHD画質以上で再生されることは確認できた。Androidでのみ発生する問題と考えられる。

調査

まず、同様の事例が無いか調査した。あった。

NetflixやAmazonプライムビデオでHD動画が観れない!原因は「Widevine」の変更かも

上記記事を参照すると、つまりこうである。

  1. GoogleのDRM技術 WidevineがNETFLIXやAmazon PrimeVideoでは使用されている
  2. WidevindeにはL1~L3の強度があり、L1やL2ではHD解像度が視聴できるがL3ではSD解像度に固定される
  3. このWidevine認定は時折L1端末がL3に降格されることがある

なんだとぉ…。尚、F-51AのDRM Infoは以下の通り、Widevinde L1に対応していた。










また、別の記事に当問題が既にまとまっていた。

俺のAndroid端末がWidevine L3化されちゃった事件とその回避策

素晴らしい記事だがつまりこうである。

  1. GoogleのDRM技術 Widevineは2020年夏ごろから、いくつかのデバイスのL1認定を取り消した
  2. WidevindeはGoogleのサーバーへ問い合わせをしてL1認定を常に確認している。つまり発売時点では対応している端末でも後々Google側の更新でL1非対応になることがある
  3. このせいで再生時にアプリケーションがエラーになるのでアプリ側ではL3としてフォールバック再生で対応している

ふむ…つまり…? わからん…なんなんだ…

  1. つまりL1対応端末でもL3扱いになってしまってそのままでは未来永劫L1…つまりHD以上のWidevine DRMが適用されたコンテンツは楽しめなくなる
  2. なんらか…そう、誰かに対応して貰う必要があるが、それはコンテンツプロバイダー側なのか?それとも端末メーカー?

問い合わせてみよう:NETFLIX

NETFLIX社に問い合わせた。(※会話内容は適宜意訳されているが内容は正しいものである)

「もしもし、これこれこういう理由でAndroid端末でHD動画が再生されないようなのですがこれはどうしたらいいのかしら」
「カスタマー、NETFLIXは完全です。HD、およびHDR再生の出来るAndroid端末はこちらの文書に書かれている通りです。ここにない端末は対応していない可能性があります」
「もしもし、対応チップセットの欄にQualcomm® Snapdragon™ 865の記載があり、当方のF-51Aはこのチップセットを使用しています。つまり対応しているのでは?」
「カスタマー、NETFLIXは完全です。再生できないのは端末に原因があります。端末メーカーに問い合わせてください。フォーエバー」
(交信終了)

Widevineの話を出したものの、特に解決につながるような回答は無かった。

問い合わせてみよう:NTTドコモ

ドコモに問い合わせてみた。(※会話内容は適宜意訳されているが内容は正しいものである)

「もしもし、これこれこういう理由でAndroid端末でNETFLIXやAmazon PrimevideoのHD動画が再生されないようなのですがこれはどうしたらいいのかしら」
「お客様、F-51AはWidevine L1対応とはどこに記載が?」
「キャリアー、御社のWebサイトに記載があります」
「お客様、確かに記載があります。それでは再生できるべきですね」
「というわけでこれで再生できないのは困るのですが…、どうお考えですか? 製品機能と考えていますが… それを満足しないのはマズいのでは? 他にもPixel4XLや5、AQUOS Sense4等様々な端末で事例があるようですが…」
「お客様、確認しましたが現在お客様サポートには同様の事例がないようです。こちらでは応えかねる…メーカー、或いはサービス提供元に問合わせていただきたい」
「なんやて工藤」
「Nanya-Tee-Driven」
(交信終了)

ふむん… どうも151に問合わせをするような層はHD動画の再生に興味がないか、SD画質になっていても気づかないのだろうか。いや、単純に最近発生し始めたという可能性はある。ちなみにdアニメはMicrosoftのPlayReady DRMを採用している(or採用していた)ので、F-51AでもHDコンテンツが視聴できる。さすがキャリアの提供するコンテンツだ、なんともないぜ

FCNTに問い合わせてみた。(※会話内容は適宜意訳されているが内容は正しいものである)

「もしもし、これこれこういう理由でAndroid端末でNETFLIXやAmazon PrimevideoのHD動画が再生されないようなのですがこれはどうしたらいいのかしら」
「お客様、事例がありません。調査します」
~数か月後~
「お客様、もし、お客様。当該端末のアップデートでNETFLIXのHD再生が可能になるようアップデートを手配しました」
「神」

というわけでF-51AはアップデートでNETFLIXがHD以上の画質で再生できるようになった。サンキューFCNT。フォーエバーFCNT。事例が無く対応は困難を極めたそうだが、FCNT社の気合の入った対応により無事スマートフォンの機能を回復できた。
どうもメールのやりとりによるとなんらかの機能不全が端末側にあり、それを解消したアップデートを配信した…ということのようだ。2022/05現在提供されているアップデートにも同内容が含まれている為、現在は問題なくNETFLIXを楽しむことが出来る。

Amazonに問い合わせてみた

「もしもし、これこれこういう理由でAndroid端末でAmazon PrimevideoのHD動画が再生されないようなのですがこれはどうしたらいいのかしら」
「Amazonは完全です、顧客。」
「困っているんですが。何故ですか。再生できない理由を明示してください」

~数か月後~
「アップデートでいつの間にかHD再生できている!!!!」

というわけで2022/3/31に公開されたVer. 3.0.318.11247以降のAPKを使用している環境で、F-51AでAmazon Prime VideoがHD/FHD画質で再生できるようになっていた。これアプリのバージョンが変わったからなのか、Amazonがホワイトリスト登録をした結果なのかは定かではないものの、現状は不足なくAmazon PrimeVideoを楽しむことができる。

現状まとめ

各社に問い合わせてみたが、今のところ解決のよすがはない。XDA-Developpersの掲示板などをみると、この現象はどんな端末メーカーでも起こり得る一方OnePlusなどはアップデートでL1対応に返り咲いた(りやっぱりダメになった)りしているらしい。感覚としては端末メーカー側にどうにかこうにか対応してほしいが、ドコモ専売端末などはdアニメなどでHD再生をサポートできればそれでよしとしているかもしれない。FCNTへから回答があり次第本記事は更新しようと思う。

今回は私の(NETFLIXではHD動作保証されていない)端末がHD動画が再生できないということがわかった。NETFLIXの一覧にある機種はHD動画が再生できるだろうし、できない場合は端末メーカーに問合わせるべきだろう。逆説的にいえばあのリストはWidevineのL1動作確認リストとも言えるので、買うならあのリストにある端末だけを買い生きていくべき、NETFLIXはそう言いたいのかもしれない。彼らの主張はどうあれ、筆者の見解としてはWidevine L1(つまり観るための必要な仕掛け)が対応していれば、4Kと言わずともせめてHD動画再生はしてほしいものである。

そうそう、リストにある機種でも端末内の何かが[破壊|不適合]とされるとWidevine DRMにより保護されたHDコンテンツの視聴は出来なくなる。あなたの端末も、実はNETFLIXやAmazon PrimeVideo('21/05/04 追記: Amazon PrimeVideoはNETFLIXともまた違う基準でHDになる/ならないがあるようなので、現状Widevineの問題を直接受けるのはNETFLIXである)がSD画質でしか再生されていないかもしれない… どうか、あなたの視聴環境がSDになっていないことを祈るばかりである。

2022/05/06追記:
執拗にAmazonに問合わせを投げ続けた結果が功を奏したのか、Amazon Prime Videoすら正しく楽しめるようになった。本記事はWideVine L1に対応している端末であれば既に不要な記事になったかもしれない。しかし、"こういう事件があったんだよ"ということを残すために本稿は残し続けるものとする。やぁ、長かったな。
いずれにせよ、(F-51A側のアップデートの必要もあったにせよ)Prime Video等で一度ユーザーエクスペリエンスが最悪な状態になるとユーザーはしばらく/永続的にそのサービスを使わなくなるものである。プラットフォーマー各社には、広範囲に影響がでる体験の劣化を放置せず迅速に対応するなりアナウンスを出してほしい。無視されているのか対応中なのかわからないと人は興味を失うので。

2021/05/04 02:15 初版
2021/05/04 20:40 Amazon PrimeVideoについてまとめを追記
2022/05/06 02:30 Amazon PrimeVideoについて追記 まとめを追記

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